坂の上の雲、司馬遼太郎

坂の上の雲〈1〉
坂の上の雲〈1〉
posted with amazlet on 06.01.04
司馬 遼太郎
文藝春秋 (1999/01)
売り上げランキング: 823
坂の上の雲を読んでいる。今はまだ二巻の初めあたりだけど完全にはまってしまっている。
文藝春秋の一月号で養老孟司さんが、司馬遼太郎さんに関して述べている記事を読んで興味をもったので読んでみた。
司馬遼太郎さんの著作を読んだのは初めてなのだけれど、非常に文が丁寧できれい。とても読みやすい。
今読んでいる中で興味深いと思ったのが、二巻目のP28の司馬遼太郎さんの歴史に関する見識が現れている部分。抜粋してみると、

国家像や人間像を悪玉か善玉かという、その両極端でしかとらえられないというのは、いまの歴史科学のぬきさしならぬ不自由さであり、その点のみからいえば、歴史科学は近代精神をよりすくなくしかもっていないか、もとうにも持ちえない重要な欠陥が、宿命としてあるようにもおもえる。
 他の科学に、悪玉か善玉かというようなわけかたはない。たとえば水素は悪玉で酸素は善玉であるというようなことはないであろう。そういうことは絶対にないという場所ではじめて科学というものが成立するのだが、ある種の歴史科学の不幸は、むしろ逆に悪玉と善玉と分ける地点から成立して行くというところにある。

司馬遼太郎さんは、歴史科学は上のような欠陥があるからこそ歴史科学者としても一級品の見識を持っていながらも「小説」として歴史を語るというスタンスを取っているのであろう。だから、あえてここでは歴史学という言葉ではなく歴史科学という言葉を使っているように思える。
おそらく小説の中の端々に著者の「歴史観」を述べる箇所が登場するという形を取っている(こういった形式を司馬遼太郎さんがはじめて採用した人なのかどうかは私は知らないが)ところに、司馬遼太郎さんのオリジナリティがあるのだろうな。
まさに、"不勉強が身にしみる"の著者が述べていらっしゃる通りですね。

面白い。

[追記]
21世紀スペシャル大河「坂の上の雲」
どうやら2007年度のNHK大河ドラマとして「坂の上の雲」が放映されるみたいです。どういうキャスティングになるんだろう。好古は異国人のような風貌と書いてあるから、かっこいいにいちゃんがやるんだろうな。正岡子規は坊主頭のイメージがあるから、役者さんは頭丸めないといかんね。真之は誰が演じるのか全然予想つかん。