ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)作者: 高木徹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/06/15メディア: 文庫購入: 28人 クリック: 241回この商品を含むブログ (165件) を見る

武装解除に引き続き戦争、紛争の裏側をドキュメントした本書を読んでみた。これも非常に興味深い本だった。
タイトルからは良くわからないかもしれないが、本書は紛争当事国に依頼されたPR(Public Relation)企業がその国の国際的なイメージを向上させ、大国の支援を勝ち取るというストーリーになっている。そもそもPR企業というものが日本にないためよくわからないかもしれないが、広告代理店のクライアントを企業だけでなく国家にも広げ政治的な印象の向上といった仕事も行うような企業と考えればいいと思う。
そういったPR企業のビジネスマンがボスニアをクライアントとし、ボスニア紛争においていかにミロシェビッチセルビア人を悪者にするかという話が書かれている。
話の本筋とはあまり関係ないが読んでいて驚いたのは、ボスニアがルーダー・フィン社(本書の主人公が所属しているアメリカのPR企業)に払った対価の少なさである。ジム・ハーフという非常に優秀な人間を長期間に渡って独占的にボスニアの情報戦略に関わらせていたのに、ボスニア政府が支払った金額はわずか10万ドル強。結果的にはボスニアの仕事はルーダー・フィン社やジム・ハーフの評価を高めたが、事前にそうなる確証はなかったわけで。よっぽど成功する確信があったのだろうか。

筆者はモスリム人よりでもセルビア人よりにもたつことなく客観的に事実を述べようとする跡が見られ、筆者の意見はきちんとそれとわかるように記述されているので良いと思う。

物凄くお勧めの一冊だと思います。