海と毒薬(遠藤周作)

海と毒薬 (新潮文庫)
を読んだ。
戦時中に九州大学付属病院で実際に起こった、米軍捕虜の生体実験という事件を元にした小説。
人体実験への罪の意識に対して異なるように見える医者と看護婦たちを描いているのだが、この前読んだ「半島を出よ」の日本人の感覚とは全然違って半世紀しか違わないのにこんなにも違うものかと思った。だって、アメリカ人をどうせ処刑されるんだから人体実験に使ったほうがいいじゃないかっていって実際に実験してしまうんだから。今ならどちらかといえば北朝鮮側のイメージだ。
ただ、海と毒薬では戦争や医者が人の体を切ること、半島を出よでは占領支配に対する一種の慣れは共通しているとも思った。
戦争中と平和ボケしている現在といった両極端の状況を比べることで日本人とは何なのか問いに答えることが出来るようになるのかもしれない。